重い物を持つと腰が痛い原因は?対処法を理学療法士が解説

query_builder 2026/10/15
重い物を持つと腰が痛い原因は?対処法を理学療法士が解説

「重い荷物を持つと腰が痛い」「仕事で物を持ち上げるたびに腰がつらい」と悩んでいませんか。持ち上げ動作で起こる腰痛には、荷物の重さだけでなく、身体との距離や高さ、持ち上げる回数、身体の使い方など、さまざまな要因が関係します。大切なのは、一つの「正しい持ち上げ方」だけで腰痛を防げると考えないことです。この記事では、重い物を持つと腰が痛む原因や負担を減らす方法、理学療法士が確認するポイント、医療機関を受診する目安まで解説します。


重い物を持つと腰が痛くなるのはなぜ?

荷物を持ち上げるときは腰や下半身などを使う

床や台の上から荷物を持ち上げるときは、腰だけでなく、骨盤や股関節、膝、足などを使って身体と荷物を動かします。そのため、重い物を持ったときに腰が痛んでも、「腰の筋力が弱い」「腰を曲げたから痛くなった」と一つの原因に決めつけることはできません。どのくらいの重さで、どの位置から持ち上げたときに痛むのかなど、実際の動作を確認することが大切です。


重さだけでなく距離や持ち上げ方も関係する

同じ重さの荷物でも、身体の近くで持つ場合と、腕を伸ばして身体から離れた位置で持つ場合では、身体の使い方が変わります。また、床から持ち上げる、身体をひねりながら移動する、何度も繰り返し持つなど、作業条件によっても負担は変化します。「何kgを持ったか」だけでなく、「どのように持ったか」まで確認しましょう。


重い物を持つと腰が痛くなる主な原因

荷物が身体から離れた位置にある

荷物を持ち上げるときは、荷物と身体との距離も重要です。床の奥にある荷物や大きな段ボールなどでは、腕を前へ伸ばした状態で持ち上げることがあります。同じ重量でも荷物の位置によって身体の使い方は変わるため、重さだけで腰への負担を判断することはできません。荷物を動かせる場合は、持ち上げる前に身体へ近づけられないか確認することがポイントです。


前かがみやひねりを伴って持ち上げている

床にある物を持つ場合など、持ち上げ動作では前かがみになることがあります。また、荷物を持ったまま横へ移動させる仕事では、身体をひねる動作が加わることもあります。ただし、前かがみや腰を曲げること自体を「悪い動作」と決めつける必要はありません。どの位置や動作で腰痛が出るのかを確認し、必要に応じて足の位置を変えるなど、身体全体で向きを変える方法も試してみましょう。


重い荷物を繰り返し持ち上げている

一度だけ荷物を持つ場合と、仕事で何度も持ち上げる場合では条件が異なります。最初は痛くなくても、同じ作業を繰り返すうちに腰の痛みや張りを感じる人もいます。そのため、荷物の重量だけではなく、1日に何回程度持ち上げるのか、連続して作業する時間はどのくらいか、途中で休憩や別の作業を挟めるかなども確認することが大切です。


荷物の重さや大きさが身体・作業環境に合っていない

重量だけでなく、荷物の大きさや持ちやすさも作業に影響します。大きな荷物では身体へ近づけにくく、持つ場所がない物では安定して扱いにくい場合があります。また、狭い場所では足の位置を変えにくいこともあります。重い物を持つ仕事で腰痛を繰り返す場合は、自分の身体の使い方だけを問題にせず、荷物の形状や作業スペース、補助具を使用できるかなど、作業環境にも目を向けましょう。


重い物を持ったときの腰痛を繰り返すとどうなる?

荷物を持つ仕事や家事がつらくなることがある

荷物を持ち上げるたびに腰痛を繰り返すと、仕事だけでなく、買い物袋を持つ、荷物を片付ける、子どもを抱き上げるなど、日常生活の動作がつらくなることがあります。痛みを我慢して同じ作業を繰り返すのではなく、どの程度の重さや高さ、回数で症状が出るのかを確認し、負担を感じる条件を整理することが大切です。


痛みへの不安から持ち上げ動作を避けることもある

「また腰が痛くなるかもしれない」という不安から、必要以上に荷物を持つことや身体を動かすことを避ける場合があります。痛みが強いときに無理をする必要はありませんが、すべての持ち上げ動作を避ける必要があるとも限りません。症状に合わせて荷物の重さや作業方法を調整し、無理のない範囲で対応することが重要です。


重い物を持つと腰が痛いときの対策

荷物をできるだけ身体に近づける

荷物を持ち上げる前に、身体との距離を確認してみましょう。手を大きく伸ばさなければ届かない場合は、可能であれば自分が荷物へ近づく、荷物を手前へ移動させてから持つなどの方法があります。特に床や棚の奥から荷物を取り出す場合は、持ち上げる前の位置を調整できないか確認しましょう。ただし、狭い場所などで無理に近づくと作業しにくくなることもあるため、安全に動ける範囲で調整してください。


股関節や膝も使って持ち上げる方法を試す

低い位置にある荷物を持つときは、股関節や膝も使って身体の高さを変える方法があります。ただし、「腰を絶対に曲げてはいけない」「必ず深くしゃがんで持つ」と考える必要はありません。荷物の位置や大きさ、身体の状態によって使いやすい方法は異なります。足の位置や股関節・膝の使い方を変えたときに、腰の痛みや持ち上げやすさがどう変化するかを確認しましょう。


持ち上げながら身体を大きくひねらない

荷物を持ち上げながら別の方向へ移動させる場合は、腰だけで身体の向きを変えるのではなく、足の位置を変えながら身体全体の向きを変える方法もあります。例えば、床の荷物を持って真横の台へ置く作業では、持ち上げと方向転換を同時に行っていることがあります。作業スペースに余裕があれば、足を動かせる位置を確保し、持ち上げる動作と方向転換を分けられないか試してみましょう。


重い物は分ける・補助具を使う・複数人で扱う

重い物を扱うときは、持ち上げ方を工夫するだけでなく、人力で扱う負担そのものを減らせないか考えることも重要です。荷物を小分けにできる場合は一回あたりの重量を減らす、台車やリフターなどを使用できる場合は活用する、一人で安全に扱うことが難しい物は複数人で対応するなどの方法があります。仕事で重量物を繰り返し扱う場合は、個人の身体の使い方だけで対処せず、作業方法や設備について職場で相談することも大切です。


重い物を持ったときの腰痛が改善しにくいケースと受診の目安

持ち方を変えても腰痛を繰り返す場合

荷物を身体へ近づける、持ち上げる位置を変えるなどの工夫をしても、物を持つたびに腰痛を繰り返す場合は、セルフケアだけでは十分に対応できないことがあります。痛みが長く続いている、徐々に悪化している、仕事や日常生活に支障が出ている場合は、自己流の対策を続けるだけでなく、医療機関への相談を検討しましょう。


お尻や脚の痛み・しびれ、力の入りにくさを伴う場合

重い物を持ったあとに、腰だけでなくお尻や脚に痛み・しびれが広がる場合や、脚に力が入りにくい場合は注意が必要です。特に症状が強くなっている場合や、荷物を持っていないときにも症状が続く場合は、「重い物を持ったから腰を痛めただけ」と自己判断せず、医療機関で相談することが大切です。


強い痛みや排尿・排便の異常などがある場合

重い物を持ったあとから強い腰痛が続く場合や、安静にしていても痛みが強い場合は、早めに医療機関を受診してください。また、排尿・排便の異常、股周辺の感覚異常、両脚の強いしびれや力の入りにくさなどが現れた場合は、緊急性の高い状態が含まれる可能性があるため、速やかな受診が必要です。


理学療法士は持ち上げ動作のどこをみる?

持ち上げ動作のどの段階で腰が痛むのか確認する

理学療法士が持ち上げ動作による腰痛をみる際は、「重い物を持つと痛い」という情報だけで判断せず、動作のどの段階で症状が出るのかを確認します。荷物へ手を伸ばしたとき、床から離す瞬間、身体を起こす途中、持ったまま移動するとき、荷物を下ろすときなど、痛みが出るタイミングを確認します。また、軽い物では問題がなく、一定の重さになると痛むのかといった症状の変化も重要な情報です。


荷物との距離や持ち上げる高さを確認する

同じ荷物でも、身体の近くから持ち上げる場合と、腕を伸ばして離れた位置から持ち上げる場合では身体の使い方が変わります。そのため、荷物が身体からどの程度離れているか、床・膝の高さ・台の上など、どの位置からどこまで持ち上げているかを確認します。荷物の位置や高さを変えたときに、腰の痛みや持ち上げやすさがどう変化するかも評価します。


腰・骨盤・股関節・膝の使い方を確認する

持ち上げ動作では、腰だけでなく骨盤や股関節、膝、足なども使います。そのため、身体をどのように下げているか、荷物を持って身体を起こす際に股関節や膝をどう使っているか、方向転換をどのように行っているかなどを確認します。ただし、腰が曲がっている、左右差があるといった一つの特徴だけで腰痛の原因と判断するわけではありません。動作を変えたときの症状も含めて考えます。


荷物の重さ・大きさ・回数など実際の作業環境を確認する

施術室で軽い物を持てても、実際の仕事では腰痛が出ることがあります。そのため、普段は何kg程度の物を、どの高さからどこまで、1日に何回くらい持つのかなど、実際の作業条件を確認することが重要です。荷物の大きさや持ちやすさ、作業スペース、台車などの補助具を使えるか、休憩を取れるかといった環境も確認します。身体の状態と作業環境の両方から、取り入れやすい対策を考えていきます。


荷物を持つたびに腰が痛む方は当院へご相談ください

重い物を持つときの腰痛には、荷物の重さだけでなく、身体との距離や持ち上げる高さ、回数、身体の使い方、作業環境など、さまざまな要因が関係する場合があります。当院では、身体の状態や実際の持ち上げ動作、仕事や日常生活で痛みが出る条件などを確認し、一人ひとりに合わせた施術やセルフケア、身体の使い方をご提案します。「仕事で荷物を持つたびに腰が痛い」「重い物を持つことに不安がある」とお悩みの方はご相談ください。症状によっては医療機関での診察をおすすめする場合があります。


FAQ|重い物を持つと腰が痛いときのよくある質問

Q1 重い物を持つと腰が痛くなるのはなぜですか?

重い物を持つときの腰痛には、荷物の重量だけでなく、身体との距離や高さ、持ち上げる回数、身体の使い方などが関係する場合があります。「重いから痛い」と一つの原因に決めつけず、どのような条件で症状が出るのか確認することが大切です。

Q2 腰に負担をかけにくい荷物の持ち上げ方はありますか?

荷物を身体へ近づける、股関節や膝も使う、持ち上げながら身体を大きくひねらないなどの方法があります。ただし、すべての人に共通する「正しい持ち上げ方」があるわけではありません。荷物や作業環境に合わせて調整しましょう。

Q3 重い物を持って急に腰が痛くなったときはどうすればよいですか?

無理に重い物を持ち続けず、まず症状を確認しましょう。楽に行える範囲で日常動作を続けることも選択肢ですが、強い痛みが続く場合や脚のしびれ・力の入りにくさなどを伴う場合は、医療機関へ相談してください。

Q4 仕事で重い物を持たなければならない場合はどうすればよいですか?

持ち上げ方だけでなく、荷物を小分けにする、台車やリフターなどの補助具を使う、必要に応じて複数人で扱うなど、作業そのものの負担を減らせないか検討しましょう。持ち上げる回数や作業環境を見直すことも重要です。

Q5 重い物を持って腰を痛めた場合は病院へ行くべきですか?

腰痛が続く・悪化する場合や、お尻や脚のしびれ、力の入りにくさを伴う場合は医療機関への相談を検討しましょう。排尿・排便の異常や股周辺の感覚異常、両脚の強い症状などが現れた場合は、速やかな受診が必要です。

 

参考文献

1.日本整形外科学会・日本腰痛学会「腰痛診療ガイドライン2019(改訂第2版)」

2.厚生労働省「職場における腰痛予防対策指針及び解説」

3.NIOSH「Revised NIOSH Lifting Equation(RNLE)」

4.van Dieën JH, et al. “Stoop or squat: a review of biomechanical studies on lifting technique.” Clinical Biomechanics. 1999.

5.Nolan D, et al. “Are there differences in lifting technique between those with and without low back pain? A systematic review.” Scandinavian Journal of Pain. 2020.


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